COVID-19が5類化して、少しずつ社会が順応に向かっています。ただ、今でも入院患者さんがいますし、ウイルスそのものに何か変化が起こったわけではありません。数多くの感染症の中でも、感染性が強く、重篤化することもある疾患として向き合っていくしかないのです。とはいえ、どうもその点が社会に浸透していないなということを感じています。患者さんから様々な疑問、質問、ご意見を賜りましたので、共有してちょっと現状を整理しておきたいと思います。

5類になったのに検査するの?

 コロナ感染者を全例登録したり、行動制限を課すわけではなくなったので、どんどん検査をして拾い上げることまではしなくてよくなりました。ですから、検査しなきゃダメということはありません。しかし、他の疾患らしさが乏しかったり、急性上気道炎や肺炎を起こしているのであれば、当然原因を調べたくなるものなので、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の存在を確認する何らかの検査をオススメされることはあります。5類になったから検査が不要になったとまでは言えません。同じく5類のインフルエンザウイルスだって、感染状況によっては積極的に検査をされることもあるでしょう。また、他の人にうつさないように生活するというのが重要ですから、これら感染性がある程度強い病原体を持っていることが分かれば、その後の生活指導につなげます。これも、医師としての大事な仕事です。

5類になったから検査したくないです

 検査もタダではないので、安く済むならそれに越したことはないです。ただ、検査前確率が「うーん、どうだろうな」程度に高かったら、コロナだろうとインフルエンザだろうと検査を行うことはあります。しかし、受診したものの「検査はしたくない」とおっしゃる方がチラホラいらっしゃいます。受診が義務的な空気が醸成されたままなので受診はしたけど、診断のための検査までは積極的にしてほしくない、という曖昧なグループが存在しているような気がしています。というわけで、次のような会話も生まれます。

医師 上気道炎、いわゆるかぜらしい状況ですね。コロナPCRしておきましょうか?
患者 え? コロナの検査するんですか? 5類になったのに?
医師 はい、今の感染状況ならそうだったとしてもおかしくないなと。
患者 え? インフルエンザの検査はしないんですか?
医師 発症から間もなければ検査の信頼度が低くなるので、今日やる意義は乏しいかもしれません。
患者 ほんなら検査はもうえぇわ。
医師 コロナの検査もしないということですか?
患者 そうですね。もう5類になったんだから、したくないです。
医師 上気道炎症状に対しては解熱薬など出しましょうか?
患者 いや、薬はあります。
医師 そうですか、では今日は診察のみということですね。
患者 もしかして、お金いるんですか?
医師 診察はしましたので。
患者 何しに来たんか分からんやん。
医師  診察です……。

5類になったのに入院しなきゃダメなんですか?

 入院しなければいけないことはないのですが、酸素が必要になったり、食事が取れなくなったり、身動きが取れなくなったりと、様々な理由で入院になることはあります。個室に入院するか大部屋になるかは院内の状況次第かもしれませんが、とにかく入院の必要性については医師の判断と自宅生活の可能性をよく考えていただければと思います。

 地味な混乱が続いていますが、とにかく爆発的な広がりにはなってほしくないという願いにも似た気持ちで日々診療しております。一応当院では、5類になったのを機に、完全防備で救急応需をしていたものを、少し軽装備の対応にしました。現状はアイガード、マスク、手袋、袖なしエプロン程度としております(エアロゾル発生手技の際はN95を考慮)。入院患者さんの対応をしている最中は、少なくとも僕らも無防備にはなりにくいなというところです。しばらくはすり合わせの時期なのでしょう。来月はどんな状況になっていることか……。